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「大阪で働きたい」安田洋祐先生に何でも聞いてみた(後編)

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ゆきりん

Edited by  ゆきりん

@ykringum
外語 / 4回生ループ

「大阪で働きたいけど、会社は東京に集中している」「大阪万博で大阪はどうなるの?」という阪大生の声を聞きました。 

 

そこで、イケメン経済学者の安田先生に何でも疑問をぶつけることにしました。先生の大阪愛にも注目です! 

(前編はこちら) 

 

留学する意味あるん?  

ーー先生はアメリカに留学されていたんですよね。 留学したほうが良いのか迷う阪大生も多いですが、留学して良かったと思いますか? 

 

良かったですね。アメリカに行かなかったら一生、留学していたら自分はどうなっていたんだろうと思い続けていたと思う。 

習うより慣れろなところがあって、行かないと自分の中ですごく妄想が膨らむんだよね。 

 

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経済学の場合、アメリカが研究の中心だから、向こうで教えている先生たちは半端ない数の論文を書いている。そういう一流大に行っている、世界中から集まってきた学生たちもすごく優秀なんだろうなと、学生当時は思っていたわけ。

 

でも行ってみると、確かにそういう人はいるけど、話してみるとそこまでぶっ飛んだ感じで凄い、というわけではないんだよね。同じ人間なのでそれは当たり前だけど。 

 

業績だけで判断すると「宇宙人」とか「ヤバいくらい天才」に見えても、会って話してみると大したことはない。ただ抜群に論文を書くのが上手いとか、コツコツ作業を続ける持続力がある。派手さはないかもしれないけれど、地道な努力を続けられる人たちが偉くなっていくんだな、というのは向こうで実感しました。 

 

ーー先生の出身の東大や、阪大にも頭のキレる人はいそうですが、アメリカのほうがそういう人がいたのでしょうか? 

 

いや、いなかった。いないことに気が付けたのも、とても大きかったと思う。今までの人生で何人か天才、というかすごい頭の回転が早いと感心した人が2、3人いるんだけれど、全員日本人だね。 

海外にも、こういうスーパーな人たちはもちろんいるんだろうけど、そこまですごさを実感できる程の交流はできなかった。 

 

ーー英語が母語じゃないから、そこまで交流できないというのも大きそうですね。 

 

あるね、それは。逆に、日本の大学や大学院では、母国語でかなりレベルの高い交流ができる、という点も忘れちゃいけない。 

まあ、若い頃は自分が良いと感じる環境で研究するのがいいと思います。でも将来的に海外を考えているなら実績が必要になってくるので、学部時代から英語文献を読んだり、大学院の講義をとってみたり、論文をきちんと書いたり、と準備しておくことも大切です。 

 

 

大阪には自由のDNAが息づいている?? 

ーー次のテーマは「大阪」です。東京一極集中が進んでいる中で、首都機能と経済機能を分ける研究もあります。先生はそれについてどう思いますか?

 

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首都移転には反対。 

東京に集中しすぎているのが問題というけど、なぜ集中が起きるのかをまずは考える必要がある。集中するのはメリットがあるからです。 

それを強制的に変えようとしても、混乱だけ発生して上手くいかないと思う。 

とくに、政府や自治体が直接コントロールしようとするのは大反対。もっと都市の自主的な発展に任せるべきじゃないかな。もし、経済も行政も中心が東京というのが嫌だったら、無理やり東京をコンパクトにしようとするのではなく、関西や他の地方都市が頑張るしかないんですよ。 

 

ついでにいうと、大阪・関西圏は経済面ではピンチな状況で、向こう数年で名古屋を中心とした東海圏に経済規模で抜かれそうです。実は、GDPの算出方法が変わった影響もあり、すでに都道府県単位で見ると大阪府は愛知県に(府)県内総生産で抜かれています。 

 

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断トツでトップなのが東京圏で、世界的に見てもひとつのエリアに4000万人近い人が住んでいる巨大都市は他にない。日本全体の人口はこれからどんどん右肩下がりで落ちていくけど、東京圏は向こう20〜30年は世界のトップでい続けるでしょう。 

 

だから、世界一の大都市圏であるメリットを生かして、東京はもっと成長を目指していくべきです。じゃあ、東海エリアにも抜かれそうな関西が何をすればいいのか。 

 

「東京に出て行った関西出身企業を地元に呼び戻そう」とおっしゃる財界人の方は少なくないのだけれど、個人的にはあまりセンスが良いとは思えません。関西圏はもっと世界から人を呼び込んで、多国籍都市を目指すのが良いのでは。 

 

ーーなるほど……。大阪や関西はそのためにどうすればいいのでしょうか?  

「経済の中心を大阪にする」というマクロの話ではなく、特区を作ったり、外国資本でもビジネスをやりやすくするような規制緩和をしたりといった、ミクロ目線の施策を関西で考えていくのが筋が良いように思う。 

 

よく「イノベーションは周縁から生まれる」と言うけれど、政治・経済の中心から離れていて既得権益から自由な空気というのは、新しいモノ・コトを生み出していく上で、大阪の大きな無形資産だと思う。 

 

実際に、大阪はもともと商人の街で、政治の中心だった東京/江戸から遠いからこそ自由にやれるDNAが息づいているんです。 

 

インバウンド需要で外国人観光客がたくさん来ても、大阪の人は商魂たくましいから、英語や中国語が話せなくても上手くコミュニケーションがとれる。難波あたりに行くと、そういう感じのおっちゃん・おばちゃんがたくさんいるでしょ。 

 

 

(たしかに、大阪南の人間、つよそう) 

 

 

ああいう、したたかさというか、国際化に対応できる柔軟さを大阪人は持っているように感じます。東京の人はやっぱりシャイで、関東にもたくさん外国人観光客は来ているんだけれど、あまり馴染んでいない印象なんだよね。関西はこうした伝統があるのと、地理的にもアジアに近い。 

 

世界から人を呼ぼう、受け入れよう、というときに僕が念頭に置いているのはアジアです。実際、インバウンド客の約8割は韓国、中国、台湾を中心とした東アジア地域から。もちろんヨーロッパやアメリカからも来るけれど、メインはアジアでしょう。 

 

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東京には日本中からハイスペック人材や大企業が集まる、大阪にはアジア中からおもろい人材が集まってベンチャー企業がどんどん出てくる。そんな時代がやってくると面白いよね。 

 

 

 

大阪ストラット(安田先生ver) 

ーー大阪は東京に比べて住みやすいと思いますか? 

 

よそから来た人にとって大阪は東京よりも全然面白いし、住みやすいと思います。 

 

梅田って大阪の人はあまり気づいていないけど、東京以上に異常に便利な街なんだよね。ショッピングもできるし、レストランもあるし、オフィスもある。東京でも新宿なんかは少し近いかもしれないけど、ごちゃごちゃしているし、梅田ほど高級なお店も多くない。 

 

丸の内や大手町はビジネス街で娯楽やレストランが揃っているわけじゃないし、銀座や表参道はショッピングや飲食だけ、渋谷は比較的なんでも揃っているけれど若者中心、というように、東京という巨大都市の中に小・中規模の色んな街が分かれています。 

 

一方で梅田は、そこそこのサイズの国の首都以上に、一か所に何でも揃っている。そして、こんなに便利なキタからミナミに移動すれば、今度は一転してアジア的でカオスな雰囲気があるでしょ。

 

ちょっと路地に入ると古いお店やお寺なんかもたくさんある。高層ビルやオシャレスポットみたいなモダンな部分と、伝統的・アジア的な部分が融合しているのが大阪の大きな魅力だと思います。 

 

伝統も息づいている上でモダンな側面もある、さらにアジア的で混沌としたエネルギーも感じることができて、すごく楽しい街なんだよね。あと、通勤ラッシュが東京とは比較にならないくらい楽(笑) 

 

やる気と才能に溢れたアジアの若い人たちに、ぜひ関西のスタートアップなんかで活躍して欲しいですよね。

ビジネス的にエキサイティングなことをやれるし、毎日ぎゅうぎゅう詰めの電車という精神的苦痛を感じず、食費も安くご飯も美味しい。生活の質が極めて高いから、国内企業だけじゃなく海外企業も誘致できるポテンシャルはあると思います。 

 

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(ウルフルズの「大阪ストラット」ばりの語り口だ……!) 

 

 

欠点があってもおもろい人を集める 

ーー先生は雰囲気的に東京っ子かと思っていて、阪大赴任当時のブログでは「自分が大阪に住むと思わなかったし、大阪のイメージがないと周りからも阪大の先生にも言われた」と書いていらしたのに、今は大阪に強い思いを持っていらして驚きました。 

 

大阪のほうが都市としては魅力的ですね。 

 

その上で東京と大阪の棲み分けを考えると、東京は日本中から才能ある人を集めれば良いと思う。どの国でも政治・経済の中心地はそういう都市になりやすい。アメリカのワシントンD.Cやニューヨークも、やはりそういう人、企業が多いわけです。 

 

でも、おもろいことをやる、世界中からおもろい人材を集めているのは政治の中心から離れたシリコンバレーです。大阪もおもろい人を世界中から集めればいいと思うんですよ。 

 

 

(おもしろいじゃなく、おもろいって言ってるところに大阪愛を感じる……!) 

 

 

新しいアイデアがある人を集められる魅力がこの都市にはあるけど、成功例はまだ少ない。残念ながら、大阪発の新しいビジネスやイノベーションが最近全然ないように感じます。 

 

パナソニックの松下さんは大阪、任天堂も京都だったし、昔は関西出身の起業家がたくさんいたのに、今は関西に根を生やしているベンチャー企業や経営者がすごく少ない。関西出身でも起業してオフィスを構えるなら東京、となってしまっている。 

 

東京はクライアントも近くにいるしメリットがあるのもわかるのだけど、そこでさっきの話にも繋がるキーワードは、大阪は世界に目を向けるということ。 

 

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アジアでビジネスをやるならお客さんが日本人でなくなってくるから、東京にいる必要はあまりない。海外向けの仕事も増えてくれば大阪で拠点を構えるのはデメリットにならない。その辺の成功ケースは出始めているみたいなんだけど、ここから爆発的に増えていかないかと期待していますね。 

 

 

ーー観光以外では、まだ大阪に外国人を巻き込む産業はあまり生まれていないですよね。 

 

現状ではそうだね。ただ、きっかけとしてのインバウンドはとても大きい。大阪や関西に訪れた外国人の中から、短期間の旅行客で終わらずに中~長期間滞在して、その期間中にこっちで働いてくれる人が出てくるかもしれない。

 

そういうインバウンドの延長としての働き手をアジアから呼べるようになればいいと思う。理想的には「アジアのハブ」のような都市になって欲しい。 

 

大阪は欠点はあってもおもろいことができる人を、国籍や出身地にこだわらず集めて、日本のシリコンバレーを目指せばいいんじゃないかな。 

 

大阪は東京と似たようなことをしようとしがちなんだけれど、第二東京みたいなのを作っても、東京がコケたら大阪もコケるよね。旧来の東京型のビジネスが上手くいったらそれで良いし、そっちが駄目になったときに大阪が違うアプローチでやっていたら、東京のピンチを救えるかもしれない。 

 

分散といっても、せいぜい南海トラフ地震で東京が大変なことになったときに大阪が生き残る程度の意味しかない。本当に挑戦するべきなのは、経済の仕組みを大阪が劇的に変えていくことだと思う。

それを関西の財界人には目指していってほしいですね。 

 

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どうなる、大阪万博! 

ーー先生は大阪万博も賛成派なんでしょうか。 

 

もちろん賛成!夢洲という埋立地に万博施設を作るのに合わせて、臨海部の再開発が進む点が経済的にはとくに大きいと思う。 

 

万博だけで劇的に変わるとは思わないけど、ポテンシャルがある臨海地域を中心に大阪のインフラが整備され直すビックチャンス。東京もオリンピックを中心にインフラ再開発が行われているけど、それと似たようなことが大阪でも間違いなく起きる。 

 

計画がずさんすぎれば万博後に負のレガシーになってしまう危険性もあるけど、オリンピックと比べてそうなるリスクが少ない。 

 

 万博施設の隣に予定されているIRの誘致が成功すれば、万博跡地も例えばテーマパークとして活用できるかもしれない。70年万博の跡地に民族博物館やエキスポシティができたり、太陽の塔も上手い具合に活用されていると思う。今回も負の遺産にはならずに、大阪の新しいシンボルとして残り続けることを期待したいです。 

 

 

〜関西復権〜  阪大生よ、パ○ソニックを作ろう! 

ーー大阪、関西は今後医療で押していくという話も聞いたことがあります。 

 

それも重要な着眼点です。吹田が学研都市のように研究所が集積していて、とくに医療系が強いので核にはなると思います。 

 

京大にiPS細胞の研究所があって、理研もiPSに特化した研究所がこの前オープンしたばかり。色んなところで強調しているんだけど、医療だけじゃなくて、関西ってありえないくらい優秀な研究機関が集まっているんだよね。 

 

 

(めっちゃ関西ほめるやん……!) 

 

 

阪大、京大、神戸大という総合大学がこれだけ近いところにある。NAISTもあるし、けいはんな、神戸、吹田に学研都市があって研究所や研究機関が集積している。 

 

海外を見渡しても、これだけ狭いエリアに一流の研究所が集まっているところはほぼない。シリコンバレーにある研究機関ってスタンフォードくらいでしょ。少し遠くまで行くとU.C.バークレーはあるけど、その程度。ボストンはちょっと例外かな?

MITとハーバードを中心に色々な大学や研究所が集まっています。でも、世界的に見ても、関西やボストンくらい集積している場所って、他にはすぐに思いつかない。 

 

 

関西圏は2000~2500万の人口規模ですが、大阪府だけでも900万人超という大都市です。だけど、梅田から30分電車に乗るともう緑や空地が広がっていて、土地が安い。それを活用して、産学連携や大学発ベンチャーでイノベーションを目指していくことができます。 

 

世界的な相場から見たら、先進国ではありえない安さで大きい工場も作れるし、通勤時間も1時間かけないで良い場所に住める。中心地のオフィス賃料も、2000万人都市とは思えない破格の水準。クオリティ・オブ・ライフがすごく高いんだよね。 

東京では地価がすごく高いから、残念ながらそれはできないんですよ。 

 

 

ーー阪大生は卒業したら泣く泣く(?)、東京へ行く人が多いのは、今は企業がないからですよね。 

 

究極的な理想は、学生さんや院生さんを中心に、あるいは東京で仕事してある程度若いうちに辞めて、大阪でどんどん新しい会社を作ることです。パナソニックをまた作ればいいんですよ。 

 

卒業したら東京へ出て行ってしまう阪大生はたくさんいます。阪大はとくに理工系を中心としたサイエンスやテクノロジーに強い人材がたくさんいるけれども、彼らがみすみす東京まで行って大企業に勤め、誰でもできる仕事を任されているという現状があります。 

 

 

(すごい、パワーワードだ……!) 

 

 

大企業は名前とか、潰れなければ将来安泰だと思って行くのだろうけど、ある程度この関西に留まって新しいビジネスをやるのも良いと思う。むしろ関西の企業が元気ないのであれば、ベンチャーにとってはチャンスです。 

 

そうなってきたら本当にゲームチェンジ(*ビジネスの従来の枠組み・ルールが崩壊し、新たなものに切り替わること)が起きて面白いんだけれど、こればっかりは成功事例が出てこないことにはね。学生さんたちだけで何とかしろというのも難しいと思うし。 

 

 

ーーちょいちょい成功事例は出てきているんですよね。関西発のAIベンチャーなどについて耳にすることもあります。 

 

そうだよね。成功したベンチャー企業の中から、今度は自分たちがビジネスをするだけじゃなくて、ベンチャーキャピタルとしてお金をつけて、他のベンチャーを盛り上げる。そういう、最新テクノロジーと関西経済の両方に詳しい出資者が出てくると、だいぶ関西のベンチャー業界も変わってくると思います。 

 

 

 

——————- 

 

安田先生が大阪のことを語っているのは、なんとなく新鮮でした。「完璧に何でもできるわけではないが、欠点があっても面白い人を集める」というのは、阪大にも当てはまるのかも(?) 

 

今回のインタビューを通じて、就活、人文系の意義、メディア、大阪、留学などたくさんのことを聞けて、先生の引き出しの多さに感動しました。今後も、安田先生の各メディアでのご活躍に注目です! 

 

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Twitter: @yagena

Instagram:@yyasuda0220

 

「就活、STEAM教育…」安田洋祐先生に何でも聞いてみた (前編) 

https://oulife.jp/post-15838 

 

 

(取材:蒲生由紀子)

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