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【はなお×佐久間洋司】テクノロジーで変わる人間の感情。大人気YouTuberと若きAI研究者対談 #2

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ゆきりん

Edited by  ゆきりん

@ykringum
外語 / 4回生ループ

登録者100万人超のYouTuberである阪大基礎工学部卒の「はなお」さんと、人工知能研究会 / AIRの代表を務める現役阪大基礎工学部生の佐久間洋司さんとの対談の2回目です。

1回目では、お二人の主な活動内容をお届けしました。今回は、より深く掘り下げ、はなおさんのYouTuberとしての考え方について、そして佐久間さんが行なっている研究について迫ります。

 

#1 【はなお×佐久間洋司】阪大の異色のふたりが語ります!大人気YouTuberと若きAI研究者対談

#3 【はなお×佐久間洋司】内向き志向な阪大生は変われるのか。大人気YouTuberと若きAI研究者対談

 

YouTuberの動画はどうやって作られるのか

左:佐久間洋司さん、右:はなおさん

左:佐久間洋司さん、右:はなおさん

 

佐久間(以下、佐) ちなみに、動画を考えるときはお一人ですか?

はなお(以下、は) 基本ひとりやね。たまに会話の中で生まれたりするけど、企画は常に考えてる。

日常生活の中でなんかできひんかな、とか他のYouTuberの動画を自分なりにアレンジしたり。

俺も最初はこれは伸びる、これはイマイチとかわかっていなくて、自分がしたい企画をやっていて、そのうちに上手くなっていった。

 見る側からすると、どんなタイプの動画なのか見えてしまうことも結構あります。動画の種類や見てくれる対象を決めて、システマティックにやっていらっしゃるのかと思っていました。

 思いついたのをやってるな。

思いついたら、まずメモ。時間がない時の動画は、視聴者から「手抜きじゃね?」って来て、「お、よう分かってんな。すごいな」と思う。

 僕も「最近トークの動画が多いから忙しいのかな」とか考えちゃったりします(笑)

 素晴らしい。よく見ていればわかるんやね。俺は裏側とか気にせんタイプだから。そうでないというのは最近学んだこと。

企画って基本的にかけ算で、たとえば「自分×モノ」とか。自分の強みは理系・計算・演技…そういう自分の手札と流行しているワード、たとえばメントスコーラとかで企画を作っていく。「理系が考えるメントスコーラ」とかね。

ウイレレに自分を溶け込ませるのは俺の中では良い発想やった。W杯があって、他のYouTuberがウイレレのゲームをやってたとき、ウイレレなら俺もできるかもと思って生まれた企画。

 

はなおチャンネルより「【神回】編集の力でウイイレの中に俺を紛れ込ませたらバレるのか?ww」

 

 ご自身の動画で分析とか、批判的に捉えるフェーズはありますか?

 批判的というか、炎上しないハードルは気を遣ってはいるな。ただ守りすぎるのもよくないから、見せ方は意識している。「いつもやってるし、はなおがやるのは大丈夫なんじゃない?」というか。

普通のYouTuberだったら結構やばいみたいな感じのことができるのは、普段の行いやね(笑)

誰かが傷つくのはダメだから、そういう見せ方っていうのはすごく大事にしてるね。

 

「人を優しくする機械を作りたい」

ーー佐久間さんもメディアに出ていらっしゃるということで、そういう見せ方とか気にされていますか?

 はなおさんの見せ方をすごく勉強したいなと思っています。

僕は企業や会議などで講演させていただくことも多いのですが、そこでは日常の自分とは違う側面が現れているのかな、と思うことがあります。そういった意味で、はなおさんはどれくらい動画の中で「演じて」いらっしゃるのか気になるんですけど……。

突然ですが、僕は世界から争いをなくしたいと思っています。

 ほーー。すごいな!(笑)

 

 「人を優しくする機械」というテーマで研究していて、人工知能やバーチャルリアリティなど分野を問わず、さまざまな技術を使って人の意識を理解することを目指しています。そして私たちの意識を変えて、お互いがもっと共感しあえるようになる。

これはもちろん本気で思っているのですが、今この対談中に突然『全ての人間の意識がお互い通じ合うような、人類のハーモニーを実現したい……』って話しはじめたらちょっとこわいですよね(笑)

たくさんの人の前で研究やビジョンの話をしているときは、それはそれで日常の自分とは違う自分の側面なんだと思っています。

 

研究者を志す上でメディアや社会との関係はとても重要だと思うのですが、超えちゃいけない一線の作り方はあるんだろうと考えています。指導を受けている石黒先生や、筑波大学の落合陽一先生もさまざまな媒体で取り上げられていますが、発言に気をつけるのはもちろん、自分のキャラクターや出演するメディアを選ぶことに注意することは必要なんじゃないかと感じています。同世代では早々に有名になったことで難しい経験をした方もいらっしゃって……。

 

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 それは、敵が多くなるから?

 はい、現役高校生社長みたいな文脈でニュースやバラエティで目立ったとして、そういう時にちょっと「意識高い」発言をしてしまうと、今後はその子をバカにするようなテレビ番組が作られたりして叩かれてしまうこともあるみたいです。

 嫌な世界やねえ。

 その子たちが難しい経験をしたからこそ、SNSやメディアとの付き合い方は考えさせられました。

 

個人で生きることとメディアとの付き合い方

   そういったメディアとの付き合い方について、はなおさんはどうお考えですか?

 俺は他のメディア露出っていうのは軽い気持ちで出たいのはあるけれど、そういうのを聞くとこわいね。

YouTubeだけでできる限りやるかもしれんけど、30歳くらいが限度かとか、これからどうなるかもわからんから、YouTubeを柱に色んなところに行きたいなとは思う。どの道、マルチプレイヤーにはなりたいなって感じ。

 ご自身で演じてらっしゃるキャラクターってあるんですか?

 いや、それはないかな。全部素。今は素で、テンションが高いか低いかの違いって感じ。そんな演じることは器用じゃないからな。

 はなおさんはキャラクターとして演じているのか?って阪大の知人友人でも話します。

 

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 いや、俺は今も素やな。でも、普段あんま喋る人ではないと思う。なんか自分からベラベラ喋るほうではない。でんがんさんはどっちかというとベラベラ喋るんやけど、俺は「ふーん」ってしてるな。

 もしこの対談も素なんだとしたら、動画で拝見していた優しいはなおさんの通りで感動しました!

 ああ、そう?でもこれは素かな。

 本当は怖かったりしないですよね?(笑)

 (笑)YouTuberは全部素やと思うで。

 はなおさんが普段も動画のはなおさんと同じ調子だって話、書いても大丈夫なんですか?

 ああ、それは全然…。

 ファンにとってはかなり感激だと思います、これ。

 そう?!?!?そうかあ…。

でも、たまにキャラを演じている人はいるかもしれんけど、自分が疲れてくると思うで。

俺は一番は自分が楽しくありたいし、自分が楽しくないとそもそもやってられへんから。

YouTuberで難しいのは、大人になっていくにつれてもその事象を楽しめるかっていうこと。やってることはしょうもないやん、結局。でも、それを全力で楽しめるのも、ある意味才能というか。

普段は大人な自分でありたいけど、動画の自分は子どもな自分でありたい、それは意識していると思う。自分が楽しめんくなったら、一番おもんなくなるから。

それは普段から後輩にも言っている、「自分が楽しめることやれよ」と。

 

ーー佐久間さんも将来研究者になるとは限らなくて、政治家なども考えていらっしゃるとのことですよね。

 僕は何になってもいいと思っていて、はなおさんみたいに独自の道を切り拓いている先輩方がたくさんいらっしゃって、決められたキャリアだけを目指さなくてもいいんだなと感じています。

よく言っているのは、人類に調和をもたらすというただひとつの目的のために、その時々に一番良い役割を目指したいということ。いまは研究者がいいだろうと思っているし、いつかは起業家や政治家を目指すのかもしれない。

 

 お~~~!

 

人間の認知と共感の研究

 あと、今回は共感とかコミュニケーションについてお話を伺いたくて。僕の研究テーマは「共感」なんです。

僕そっくりに作った3Dスキャンなどを使う研究をしています。例えば、VRヘッドセットをはなおさんにかけていただいて鏡を見たら、はなおさんが向き合っている鏡には僕が映っている。VR上で佐久間洋司に成りかわる体験みたいなことをしています。

 

その上で、僕が講演やトークをしているのを真似していただき、そこで僕のロールプレイをしてもらったときに「情動的共感」と呼ばれるものが促進されるんじゃないか。僕がきのこの山とたけのこの里では、たけのこの里が好きだと言ったときに、その意見に引っ張られてしまうような同調効果も調べられたらと思っています。

 自分が勝手に寄せてっちゃうのもありそう。

 白人が黒人の肌の色を経験すると黒人に対しての理解が向上したとか、老人の身体を経験すると老人に対して肯定的な言葉を使うようになったという結果もあります。

そういうのが流行ってきている中で、VTuberのブームの背景でもあるキャプチャシステムの低コスト化などにも後押しされて、今回の研究を始めています。人種や年齢といったグループではなく、特定の個人に成りかわるレベルでも確かめられるのではないか、佐久間洋司になるという経験は成立するかというのがポイントです。

 

情動的共感と認知的共感

 そういった研究に取り組む中で、YouTubeやTikTokを見ていて、こういう変化があるんじゃないかなって思っていることがあります。まず、共感って二段階あるんですよね。一次的とも言える情動的共感と、いわば二次的な認知的共感があるのだと認識しています。

例えば『君の名は。』っていうのはすごく情動的共感を促進する映画なんだと思っていますが、ご覧になったことはありますか?

 

 『君の名は。』見た!

 ヒロインの三葉が手を開いたときに「これじゃ名前わかんないよ……」って言うシーンがあって、瀧くんの名前の代わりに「好きだ」と書いてある。そして曲調が変わって悲しいトーンになり、彼女の顔が歪んで声が震える。実はあのシーンだけを切り取って見たとしても、情動的共感としては実は泣けるんだと考えています。

比べて、フランス映画などで、長く連れ添ったカップルが別れて、最後ちょっとだけ街ですれ違って目線が合うかどうか……というシーンがあるとすると、ふたりは別の人生を歩んでいるんだなって思いを馳せると悲しくなりますよね。

でもそこを切り取っても無意味で、そのシーンだけ見ても悲しくならない。昔ずっと愛し合ってたっていう文脈を認知して、その上ですれ違っていくシーンだから悲しいんです。

ストーリーを認知した上で共感する認知的共感と、その場で相手の感情を想起して反応する情動的共感のようなもの、両者のバランスを僕たちはとっているわけですけれど、最近の流れとしては情動的共感のほうがウェイトが高くなってきていると思っています。

 なるほど、それはSNSとかYouTubeが短い情報を発信しているからっていうこと?

 ジェットカットみたいな短く動画をカットして詰める手法はテレビよりもYouTubeで顕著ですよね。僕らや中高生は逆にテレビを見ると疲れることもありそうです。

 情報の密度が薄いのが長く続くからっていうこと?

 多分、情報の密度という話に加えて、情動的共感に働きかける反応的な手法が流行っているんじゃないかと感じています。シグナルで笑いたいんですよね。

「月曜から夜更かし」はテレビの中では一番YouTubeに近いじゃないですか。あれはなぜかと考えると、たとえばポーンって音がなって、月とマツコと村上君の顔だけ切り取った静止画のシーンになって笑いを1回挟むのはご存知ですか?僕たちはあの画面が出るだけで面白い場面だって僕らは反応させられていますよね。

 

 演出自体にハメられていると。

 例えば、あの画面で言っていることが面白くなくても笑えるか実験したいと思っていて、多分できると思うんですよ。

古くから知られているのは観客の笑い声や拍手を入れる手法ですが、それがどんどん最適化されていて、あの画面でポーンとなっただけで、笑うシーンに「させられて」いる。

 

 

次回へ続く。

 

(取材:蒲生由紀子)

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